木について

木の家は「心地いい、人にやさしい」などとよく言われます。
しかし、それは木材の性質を正しく理解し、きちんと扱って建てられた家のみに言えることです。

今、日本は国土の67%が森林である。森林率で考えると、アメリカ(32%)・カナダ(54%)より高い。しかし、これを一人当たりの面積で考えると、一人当たり0.2haしかない。材用の杉中丸太の価格は、30年以上前と同じ価格である。これには、80カ国以上から輸入されてくる木材の存在がある。

今日本で使用される80%近くが輸入材で、アメリカとカナダの北米材が多い。一方、国産材は輸入材に押され、森の手入れをする人がいなくなってきた。人工林は間伐などの手入れをしないと、森は荒れ、荒廃の一途を辿ってしまう。昭和60年には45万人だった林業就業者は、〇〇年現在は9万人まで減っている。そして森林で働く人の19%が65歳以上になってきている。

厳しい事を並べてしまったが、「森林で働きたい」という若者も増えてきているようだ。あと、最近は少しずつ建築雑誌等でも、国産材を使用した建物をよく見かけるようになってきた。これを一言で「はやり」・「ブーム」と言ってしまえばそれで終わりだが、これをきっかけにもっと沢山の人達が真剣に国産材の良さについて考えていかなければいけないと思う。

私有林などは確かに個人の財産だが、それは伐採した時のことだけだ。それまでの数十年間に渡って森林がもたらすモノは、個人だけのモノではない。もっと沢山の国産材を消費して、これから大人になっていく子供達の為にも森林を、国内の林業を、大きくはこの地球を生き返らせたい。

日本特有の四季の中で、林業に携わる人達が手塩にかけて育ててきた国産材が、日本で住宅を建てるには、一番気候風土に適しているのだから。

工業製品と違って、樹木には「伐り旬」と言われる伐採に適した時期がある。

樹木が活発でない秋から冬にかけてがその時期で、伐り時期を守れば虫や菌類の被害が少ないとされる。春から夏は樹木が活発に活動し、水分やデンプンの養分を多く含むため虫や菌類の被害を受けやすい。

木は生きた素材なだけに、家など建物として建った後も環境に応じて乾燥収縮する。

シッカリ乾燥しないと木材は収縮が激しければ狂いや反りが応じる。シッカリ乾燥させたら、その分強度を増していくのである。昔の大工さんは十分に乾燥させた材を使うか、含水率の高い材を使う場合は棟上げ(建前)が終わってもすぐに仕上げをせずに、数ヶ月放っておいた。昔の家造りは2~3年の長い期間をかけて行われた。

国産材の乾燥には「天然乾燥」と「人工乾燥」がある。天然乾燥には「葉枯らし」や「桟積み」、「はさ掛け」などがある。木材の「くるい」を少なくし利用しようとする時に、もっとも適した方法は、日射と風通しを適度に調節して、長時間かけてユックリ自然乾燥させる事(天然乾燥)である。

木は、根から水分を吸い、異常気象や地球温暖化に関係があると言われる二酸化炭素を葉から吸い、太陽エネルギーの光合成によって樹幹内にセルロースやニグリンと言う炭素化合物として固定されている。これは、木が伐採された後も続いている。

伐採された木は、新たに吸収される事はないが、燃やさない限りは、そのまま炭素を固定し続ける。もちろん、住宅となっても炭素が固定されたままストックされている。つまり、木造住宅が建ち並ぶ都市があれば、そこはもう一つの森林と言える。

木材は、他の建築資材に比べて、それを作り出すエネルギーは桁違いに少なくて済む。最終段階で木材を燃焼させた時も、そのエネルギーを燃料として活用も出来る。他の建築資材は燃焼させると、有害な科学物質が出るか、燃やす事も出来ず、ただ粗大ゴミとなる事が多い。

木は親水性があって、中には水分を含んでいる。木材は、乾燥してくると水分を放出して、湿気てくると水分を吸収する。これは湿度を一定に保とうとする調湿作用ということになる。

含水率が減れば木材の寸法は縮み、増えれば伸びる。これは木の短所であり、長所でもある。ここで言いたいのは、木材が水分を吸ったままの状態にしておくと水分を蓄積して、やがて腐朽などの問題が起こる。

腐朽菌が生息する条件は、酸素と適度な水分、適当な温度、養分があること。どの一つが欠けても、腐朽は起こらない。だから、水分の管理が腐朽菌の生息を抑制するポイントになる。

木材は腐らなければ強度は低下する事はない。だが、言い方を変えると、腐ると言うことは、将来廃棄出来ると言う事になる。

木材の比重はとても重要である。木材は多孔質物質で、細胞内には空隙が沢山ある。建築に使う木材の比重は0.3~0.7位で、平均0.5前後。ちなみにスギ・ヒノキは0.3~0.4位である。比重は樹種によってさまざまである。

一般的に、比重が大きいと言うことは空隙が無いこと、比重が小さいと言うことは空隙だらけと考えてよい。比重が大きいモノほど強度的に優れ、たわみにくい。しかし、木材実質が多い分だけ、その伸縮も大きくなって狂いやすいと言える。また、比重が大きいものは熱伝導率が大きいため、触れたときに堅く、冬などは冷たく感じる。

むしろ、比重の小さいスギなどは、温かみを感じる。これは熱を伝えにくいほうが、手から失われる熱が少ないからだ。針葉樹は大体比重が小さいモノが多く、軽く狂いにくいため、建築用材として扱いやすいといえる。

木材は、方向によっても強度や水分による伸縮が違う。もっとも強度が強いのは、縦方向に長くつながっている繊維方向である。

温度変化のよる伸縮も、針葉樹の場合、繊維方向の伸びを1とすると、半径方向では約5倍、接線方向では10倍になる。この収縮の不均一性により、狂いや割れが生じる原因になる。

木材は燃えて、二酸化炭素と水になる。しかし燃えるからといって、弱いと言う訳ではない。

木に水分があるうちは、熱しても100度以上にはならない。水分が蒸発して無くなった時に、温度が上がって100度を超え、さらに温度が上昇して260度になった時、分解してガスが発生し口火を近づけると着火する。ただしこれは、木材そのものが燃えるのではなく、木材から出ている可燃性の分解ガスに火が着くのだ。

含水率が高いと危険な温度に達するまでに時間がかかる。さらに温度が上がると、約450度で自然発火し、約500度で灰になってしまう。

木材は空気をイッパイ含んでいるため、熱を中に伝えにくく、しかも酸素が供給される表面からユックリ燃えていくため、急に強度が落ちることはない。

木材の断面が灰になって失われていく速度は、1分間で約0.7mm、30分で約21mm。私達が落とし込みで使用しようとしている杉材が40mmだから単純に考えても1時間は燃え抜けるまでの時間が稼げる。これなら火災が起きてもよっぽどの事がない限り逃げ切る事が出来る。
あと、天井にも踏み天として30mmの厚板を用いるので、火の拡大を遅くすることが出来る。

他の建築資材で考えると、アルミはある温度になると解けてしまい、急激に強度が落ちてしまい、鉄は高温になると軟らかくなってしまうので熱が伝わらないように被覆して、火災時の安全性を確保している。
あと、今特に問題になっている新建材は、不燃や難燃など色々あるが、ある一定の温度に過熱されると、一酸化炭素などの有害物質を発生させる。

木材は鉄やコンクリートに比べると、熱伝導率はカナリ低い。熱伝導率が低いほど熱を通しにくいので、断熱性が高くなる。つまり木材は、優れた断熱効果を持った材になる。

鉄やコンクリートは熱伝導率が高いため、素足などで過ごしていると熱はドンドン奪われ足の温度は下がっていく。しかし木は、熱伝導率が低いため、熱はほとんど奪われる事はない。

熱を奪われないようにするだけなら、木の床でなくカーペットなどを敷けば良いのだが、カーペットはこまめに掃除しなければホコリやダニの発生につながってしまう。また、無垢の木の床はホコリがあまり舞い上がらないという良さがある。これは、木材に存在する水分のおかげである。

木材は、節のない「無地」が最高級品、続いて「上小節」、節のある「小節」、節の多い「一等」となり、節のあるなしが商品の価格の格付けに影響する。

木には節があって当たり前。大小関わらず節は強度は問題なく、節も自然の味わいとして受け入れて欲しい。